Project Story01

知的財産(IP)事業

技術情報配信サービス「swimy」の開発プロジェクト。
「何を知らないのかを知る」をコンセプトに
特許情報の新たな価値を生み出した挑戦のストーリー。

IP事業本部 第2コンサルティング事業部
ビジネスソリューション開発室 グループ長
2010年入社

清水 大樹 HIROKI SHIMIZU

IP事業本部 第2コンサルティング事業部
ビジネスソリューション開発室
2014年入社

小田 紘之 HIROYUKI ODA

INTERVIEW

「何を知らないのかを知る」の革新性。

たとえば、自動車メーカーA社の開発担当者が、競合他社の開発動向を調査する時。「○○の技術について調べよう」と明確に決めた上で調査を行うのが一般的だ。しかしもし、調査対象とはまったく別の技術がA社にとって脅威だとしたら? 本当に知るべき情報をキャッチできず、他社との競争において不利な状況が生じることになる。そうしたリスクを避けるために作られたのが、2018年にリリースされたTTDCの技術情報配信サービス「swimy(スイミー)」である。
このサービスの特徴を端的に表すのが、「何を知らないのかを知る」というコンセプト。特許情報を調査・解析すること自体はこれまでのTTDCのサービスと同じだが、顧客の依頼を受けてからそれを行うのではなく、顧客にとって必要となるであろう情報を先にピックアップして配信する。自動車業界の世界的な技術潮流や新規参入企業の動向などをコンテンツ化してタイムリーに配信。たとえば「カーシェアリング」をテーマにするのであれば、それに関連する特許情報を調査し、グラフなどを使って競合各社の動向を可視化する。配信されるのは年間100テーマ。発売間もないが、数社が使用開始し、開発戦略を立てる際などの意思決定に活用している。

自社の「強み」を活かしたサービスのあり方。

この「swimy」というサービスがどのような経緯から生まれたのか。発端は、社員の働き方を見直すことを目的に行われた社内プロジェクトでの活動である。この取り組みは、通常業務とは別の活動として有志メンバーによって行われたもの。その中の一つのテーマを担当したのが、現在BRシンクタンク推進グループのグループリーダーを務める清水大樹である。
「私たちのグループでは調査・解析を専門とするメンバーが集まって、今後の働き方やめざすべきビジョンなどを話し合いました。その時に私が声をかけたのが、現在同じ部署で『swimy』の運営を行っている小田君です」
清水や小田のグループは、TTDCの調査・解析業務のあり方を考えるために、自分たちの得意なことや不得意なこと、外部環境などを分析していった。その中でまず見えてきたのが、「強み」の部分。日本で唯一、特許調査の実務能力を評価する「特許検索競技大会」において例年上位入賞するTTDCにとって、膨大な特許情報から高い精度で情報を抽出する「検索能力」が最大の強みだと考えた。その強みを最大限に活かすために有効だと考えられたのが、シンクタンク業務(研究成果を元に戦略提言を行うこと)の立ち上げである。検索能力を活かして情報を蓄積し、その情報を顧客に求められるより前に提供する。そうした環境を作り、顧客の意思決定をリードすることができれば、TTDCならではの付加価値になるはずだ。そんな結論にたどり着いた。

「世の中にないもの」を作る喜び。

当時の清水は、IPイノベーション推進グループに所属し、調査・解析業務のシステム化や、情報を有効活用するためのツール開発などを行っていた。一方、社内プロジェクトとして進めてきたワーキンググループの活動は2016年3月にいったん終了。ただし、「シンクタンク化を進める」という提言は社内で評価され、その実現に向けた準備を、清水が中心となって通常業務と並行する形で進めることになった。そして2017年度の約1年間をかけて企画・開発を行ったのが、「swimy」のサービスである。専門部署であるBRシンクタンク推進グループが2018年4月に誕生。6月には小田がグループに加わり、再び2人がチームを組むことになった。
「小田君が加わってくれた時はうれしかったですね。2017年から『swimy』の準備を進めてきましたが、彼が加わったことによって技術面でもさらにハイレベルなことができるようになりました」
小田はプログラミングなど情報系のスキルに長けた社員。その技術を活かして「swimy」のコンテンツ作成を担当することになった。今後の自動車業界にとって特に重要だと思われる情報や、顧客に「気づき」を与えるような最新情報をコンテンツ化するのが、主な役割である。企画会議の場で出された「こんなことをやりたい」というアイデアを迅速に形にしていく小田の活躍。それによって、「swimy」の開発は加速していった。
「大変さを感じるよりも、『これが実現できたら面白いな』という気持ちの方が強かったです。世の中にないものを作ることへの喜びを感じていました」と小田は振り返る。

AIを駆使し業務プロセスの自動化を実現。

「swimy」の画期的な点の一つは、特許情報を調査・解析するプロセスを自動化したことである。たとえば「カーシェアリング」に関する特許を1万件分析するとして、今までならそのすべてを人の目で確認し、不要なデータを取り除いていく必要があった。一方「swimy」では、そのうちの1千件を人間が確認し、結果をAIに機械学習させれば、残りの9千件の判断は自動的に行うことができる。
さらに、最新の技術動向などを単にコンテンツとして配信するだけではく、顧客それぞれの視点で編集できる機能も搭載。この機能を使えば、顧客が必要とする情報を自社にとって最適な形に編集することができる。
自動車関連企業各社にこのサービスが浸透していった先に、どんなことが起こるのだろうか。まず、各社が特許情報を迅速に入手できるようになり、他社の動向を把握しやすくなる。その結果、各社それぞれの技術開発が進めば、自動車産業全体の進化のスピードが速まっていくと予測できる。「他社に学んでより良い技術を開発する」という考え方が浸透し、産業の発展が加速していくのだ。
「革新的な技術が1社のみで使われるのではなく、よりオープンな情報として、社会全体に役立てられるようになっていくと考えています。『技術を広く公開して産業の発展を促進する』という考え方は、特許法が作られた趣旨とも合致するものです。『swimy』の存在意義はきわめて大きいと考えています」
と清水は語る。BRシンクタンク推進グループがめざすのは、「世界の産業の発展に寄与する」という大きな目標。メンバーの力を合わせて世の中にないものを生み、世界にイノベーションを起こすための取り組みを続けていく。

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